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逃れられない三菱自動車・ゴーン日産のしたたかな戦略

軽自動車

これで三菱も終わった。だれもが思ったことでしょう。

でも、日産自動車はつぶれかけた三菱を傘下におさめることにしました。
日産自動車は三菱自動車の株式の34%を2370億円で獲得。

報道をよーく見てると。
日産自動車のしたたかな戦略が見え隠れします。

ブランドイメージが悪くなるのに三菱を助けることに何の意味があるのか?
不祥事をおこした三菱を助ける必要なんてない。
三菱を助けてあげるとは日産は偉い。

という意見がでていますね。

日産は人助けで三菱を支援するわけではありません。
ビジネスとしてメリットがあるから三菱を傘下にするのです。

僕は過去の記事で「三菱は日産の下請けになるかもしれない」と書きましたが。
三菱を日産のコントロール下においてしまうとは。
さすが、ゴーン社長やることが違います。

燃費偽装で営業的に打撃を受けた日産。
イメージ低下で他の車種まで売れなくなるかもしれないのに。
日産としては賠償責任を三菱に負わせたいほど被害を受けたはずなのに。
なんで悪事を働いた三菱を助けてあげるのか。

だって、このタイミングで三菱を助けて日産の一員にすれば。
悪いイメージが日産にも移って、
日産の車が売れなくなるかもしれない。

でも、

「ビジネスマンらしき決定を下す」 

そういったゴーン社長は普通の日本人経営者が考え付かないような決定を下しました。

いったいどんな思惑があるのか。
報道の裏に隠された意図を探っていきたいと思います。

 

目次

日産が三菱自動車を傘下におく意味

 

三菱のもとから離れてしまう三菱自動車

 

日産が傘下におくということはどういう意味があるのでしょうか。

現在、三菱自動車の株式の34%は、
三菱重工、三菱商事、三菱東京UFJ。
三菱ゆかりの大企業(三菱御三家ともいわれます)が持っています。

三菱自動車は三菱グループの一員だったわけです。

しかし、日産は今年の10月に株式を買い取って、
三菱自動車の株式34%を得ます。

三菱御三家の保有する株式は22.4%に下がります。
三菱グループの影響力は低下し、
日産の思惑が優先される会社になるのです。

マスコミ、経済会には三菱グループが助けるだろうという意見が多かったです。

でも三菱御三家には、三菱自動車を助けてる余裕はありません。
三菱商事は赤字に陥り、重工も好調とは言いがたい。
そんな中で三菱自動車を助けたりしたら株主に説明できない。

三菱自動車はリスクが大きい問題児。

と判断され、グループからも見放されました。

 

株式3分の1を持つ意味

 

日産は単独で株式の3分の1以上を保有します。
するとどうなるのでしょうか。

株式の3分の1を持てば株主総会で拒否権を持ちます。
他の大勢の株主が賛成しても、
日産一社が反対したら三菱自動車は決められません。

日産は三菱自動車の役員4人を指名できます。
そのうちの1人は会長になります。

つまり。

三菱自動車のトップは日産の人間。
株主総会では日産が反対したら何も決められない。

三菱自動車は日産の思いのままになるしかない。
ということです。

ブランドとしては三菱自動車の名前は残っても。
日産自動車グループの三菱事業部。
みたいな感じになるわけです。

富士重工やダイハツはトヨタの子会社だ。といわれます。
でもトヨタは富士重工やダイハツの株式の16.5%しか持っていません。
それでも子会社化できるのです。

34%も保有すれば子会社どころか会社の一部になる。
と考えたほうがいいでしょう。

ルノーは日産自動車の43%の株式を持っています。
それと同じことが日産と三菱の間にも起こるのです。

ルノーを含めた日産の思惑がトップダウンで三菱に伝えられ。
三菱自は従わざるを得ない。

従来の財閥体質に甘えた企業風土が払拭される。
とマスコミは歓迎ムード。

もちろん。
日産は三菱の体質を変えるために支配下におくわけではありません。
よその会社なんてどうでもいいのです。

利用価値があるからです。

 

日産はもともと三菱を傘下にするつもりだった

 

実は、
4月20日に燃費偽装が報道される前から
日産は三菱自動車を傘下におくことを検討していました。

今回の資本参加についてゴーン社長は
「長期的な展望の延長線上」
と語ってます。

日産としては三菱に資本提携し傘下に収めたいと考えていたのです。

なぜ三菱が必要なんでしょうか。

 

日産が三菱を欲しがるわけ

 

日産はルノーの子会社です。

つまり。

日産の決定にはルノーの世界戦略が必ず関係します。

 

世界の自動車メーカー年間生産台数

1位 トヨタ 1015万台
2位 VW 993万台
3位 GM 960万台
4位 ルノー・日産 853万台
 
  三菱 107万台

ルノー日産グループは世界で853万台を売り上げる大きな勢力です。
でも上位3社との間には100万台以上の差があります。

現在の世界の自動車メーカーはビッグ3とその他に分けられます。

でも、三菱の105万台が加われば。
960万台。

GMに匹敵する巨大自動車メーカーの出来上がりです。
ビッグ3に食い込むことができるのです。

単なる数あわせではありません。

三菱はルノー・日産連合に足りないものを持っていました。
それは。

・新興国むけの安い車。
・SUV。

三菱にはアウトランダー・パジェロという人気車種があります。

日産にも似たような車種はありますが、
トヨタ・富士重工グループに対抗するには日産の車だけでは無理です。

三菱自動車はアメリカや東南アジアで自動車の販売実績があります。

将来的にはエクストレイル・アウトランダーが姉妹車の様な形になり、
アメリカやアジア市場で拡販することも視野に入っているでしょう。

三菱自動車は
ルノー・日産グループの弱点を補うために
都合のいい存在なのです。

 

三菱がルノー・日産に下った理由      

 

でも、三菱自動車は独自性が失われること。
などを理由に資本提携には否定的でした。

いざとなれば三菱グループの援助も期待できました。

VWとスズキの例をみても分かるように。
欧米の大企業との提携はうまくいかないことが多いです。

マツダがフォードとの提携で独自性を失わずに
復活できたのは珍しい例です。

なかなか資本提携に応じない三菱自動車に対して、
ルノー・日産としては歯がゆい思いをしていたでしょう。

しかし、不祥事の発覚が三菱の思惑を全て崩しました

三菱は数少ない国内の稼ぎ頭が売れなくなりました。
顧客や日産に賠償金を払わないといけません。

主力車種が売れなくなり、巨大な賠償が残ります。

自力再建する体力はありません。

しかも運悪く今の三菱グループには助ける余裕がありません。

会社を残すには
日産の資本提携を受け入れるしか生き残る道はなくなってしまったのです。

 

ルノー・日産にはメリットの方が大きい

 

日産は三菱との協力によって。
日産は三菱との提携で軽自動車の開発技術を得ました。

事実。
デイズ・eKワゴン後継者は、日産の主導で開発することが決まってました。
三菱は生産担当の予定でした。

だから今回の問題が起きても、開発スケジュールに大きな変更はないでしょう。
どこで生産するかの問題です。

日産は軽自動車を自力生産するつもりですが、1年以上先の話です。
三菱の水島工場がそのまま使えれば生産再開は早くなります。

国内での軽自動車シェア拡大を狙い、
軽自動車第三位の本田を猛追したい日産としては
生産体制の早急な復活と拡大が必要です。

そのためには日産は自前の工場では足りません。
三菱の生産拠点には魅力があります。

新興国向けにはマーチ・ミラージュの部品を共通化し拡販。

巨額の費用のかかる電気自動車の共同開発と普及。

SUVをアメリカ、アジアで拡販。

 

逆境に見えても実は最大のチャンス

 

三菱を傘下におくことでルノー・日産グループには多くのメリットが生まれます。
だから、以前から三菱をグループに組み込みたかった。

でも、今なら格安で手に入ります。
三菱も抵抗できません。

信用の落ちた今だからこそ、お買い時なのです。

そのためには三菱の不祥事が大きくなればなるほど都合がいい。

イメージが悪くなるのでは。
と思ってるのは日本国内だけ。

軽自動車の問題は海外では関係ないし。

安全性に問題があるなら別ですが。
燃費偽装はVWでもやってることです。
VWは一時的に売上が落ちましたが、経営危機になる事はありません。
EUが問題にしなければヨーロッパでは大きな影響にはならないんですね。

アウトランダー(RVR)の売ってるアメリカ市場では多少は影響あるかも知れませんが。
長期的には問題ないということなのでしょう。

ルノーの影響力を考えれば、
極東の島国限定で売ってる車の燃費偽装など些細な問題なのかもしれません。

世界的視野で考えるルノー・日産グループにとっては。
今の国内の混乱は大きな問題ではありません。
メリットのほうが大きいのです。

「日産が三菱を守った」なんて思ってる人もいるかもしれませんが。

ルノー・日産にしてみれば、
これ以上はないほどの大チャンス。

どこまで考えていたのか分かりませんが。

つくづくやり手だなと感心させられます。

 

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